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おばあちゃんは「隣の部屋に行きましょう」と笑い、私は訳もわからず、言われるがまま移動した。
なんだか怖い。
お化けでも出そうな洋館と、ギラついた目のおばあちゃん。シャンデリアは灯っているけれど弱い光。
隣の部屋には足先がくるりと曲がった猫の手のような椅子が1脚あった。
床は経年劣化のせいか、歩くたびにきしむ。
壁紙は深い赤を基調とし、家具という家具は古ぼけたシルバーやブラウンの色で鈍く光っている。
「座って、大丈夫、怖くないから」
余計に怖くなり身を固くしたが、とりあえず座ることにした。
座ってから気づいた。恐怖より好奇心が上回っていることを。
「おばあちゃん、私、少し怖い」
「何かあったら私を突き飛ばせばいいのよ。抵抗したら、こんな老体に負けるわけないわ。心配なら……」
近くの化粧台の引き出しを開けて何かを取り出す。窓から入った月光がそれを照らし、私は身を引いた。
鋭く尖ったナイフ。それは鏡のように私を写し出している。
これ、結構ヤバいかも。
恐怖で足に力が入らず、身を固くしていると「これを持ってなさい」おばあちゃんは薄暗い中、笑った。
持ち手を私に差し出し、躊躇しながらも手にする。普通の包丁とは違い、ずしりと重い。
「これで安心でしょ?何かあったら、切ればいいのよ」
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