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これが、三高青春部??
「確か文化部部室棟二階の・・あ!あった!」
三高には部室棟が2棟あります。スポーツ系の方は最近、真新しく改装されたみたいですが、文化棟は結構怖い。夜中に訪れたくない雰囲気を醸し出しています。
スポーツ棟は三階まであり、各部室は広く、シャワールーム完備だったりするそうです。しかし文化棟は二階までしかなく、部室数は多いけど、一部屋一部屋が狭い!格差ぱねー!ってやつです。
「一番奥・・。やばくない?やめない?」
美咲は怖がりです。ホラー映画を観て、失神した事があります。
「開けるよ!」
ノックをしてから恐る恐るドアをゆっくり開けると、そこは六畳ほどの部屋で、真ん中に四人掛けのテーブルとパイプ椅子がある他は、小さめの黒板と、本棚、そしてロッカーが二つ。そして、誰もいません。
「窓開けない?ホコリっぽい」
普通の部屋だった事に安心したのか、美咲がガツガツ部屋に入っていき、窓を開けます。初夏の爽やかな風が吹き込み、気分爽快になります。
「あれー?この部屋しばらく使われてない感じだね」
椅子に腰掛けて、テーブル上に置いてあったノートをパラパラとめくります。表紙に「活動記録 青春部」と書いてありました。やっぱりここは、青春部の・・
2020年3月8日 本日を持って、私たちは卒業となり、それに伴い青春部は廃部となる。よくやった。思い残す事はない。
部長 平野 紗奈 副部長 大平 愛華
「え?えーー!!」
「何!びっくりした!どうしたの!」
「これ・・」
つまり。私たちが入学する直前、青春部は廃部となり、その日以後、誰もこの部屋に入っていなかったと。そういう訳ですね。
「なんで部活紹介一覧に名前があったんだろ」
その通りです。入学式の日に渡された数枚の紙の中にそれはありました。【三高部活紹介一覧】と言う名の部活名リストが。
「なんだー残念・・」
まさか廃部になっていようとは。少しでも楽しい事が起きないかと、期待した私の気持ちと時間を返して!
「まっそゆことで。帰ろ」
「だねー」
「あなたたち・・ここで何してるの?」
ぬあ!びっくり!これは美術の先生、兼美術部顧問の信濃先生!
「あーっ青春部に興味があって来てみたんです」
「青春部?廃部になってるわよ?」
「そうみたいですね!リストには載ってたので・・」
「リスト?あーっ部活一覧ね。あれ、しばらく更新せずに刷ってるから・・」
にしても信濃先生はお美しいです。女の私から見ても美人過ぎて、近寄りがたい!まだ独身って聞いたけど・・
「そうなんですね!教えてくれてありがとうございました!では!失礼します!」
美咲を連れて部室を出ようとした時、先生に呼び止められました。
「どうして青春部に興味が湧いたのか知りたいな」
その後、美術準備室に案内された私たちです。油絵具の匂いと、先生のいい匂いが混ざって、鼻がよくわかんない事になってます。
「コーヒーがいい?ココアもあるけど」
「あっお構いなく!」
「じゃぁコーヒーで。ミルクありの」
「はいはい」
コーヒー二杯と、ココアが一杯。先生が、美咲にはコーヒー、私にはココア。それにミルクと砂糖を私たちの前に置き、対面に腰掛けてコーヒーを一口飲みます。大人って感じがします。
「柊弥椰さんに、河内美咲さんだよね?一年の」
「はい!」
「そうです」
「2人はどして青春部に?」
「私は弥椰の付き添いです。仕方なく」
「なるほど。柊さんは?」
「えーと・・何か始まる気がしたというか・・」
「始まる?」
「青春みたいなやつが!です!」
「そう。青春したいって思ってた訳だ」
(ちょっと!何よそれ!)
美咲が小声で聞いてきます。言ったらバカにしそうだから言わなかったの。
「青春というか・・今しか出来ない事があるんじゃないかなって・・このまま普通に高校生をやって、3年過ごして卒業でいいのかなって・・」
「弥椰・・」
「いいんじゃない!やってみたら!」
先生がニッコリ笑って言いました。
「え??」
「普通じゃない何かをして青春したい!って思ってるんでしょ?じゃぁやってみたら!?」
「な、何をすれば・・」
「それは自分で見つけるの。そして自分で決めるの。人が決めた事をするだけじゃ、青春とは言わないわ。きっとね」
「あっ・・」
「もしそのきっかけに青春部が必要なら。私、顧問になってあげる。まぁ部として認可させるには最低4人必要だけどね。」
「それ、私も入ってないよね?!」
「あと2人・・」
「やっぱり・・入ってる・・」
「でも。安心して。部員2人に顧問がいれば、サークルとしては認可される。まずはそこから。でどう?」
青春部再興を私たちが・・?
「で、出来ますかね」
「やってみなくちゃわからない。なら、やってみたら?って言ってるんだけどな」
「先生・・」
「じゃっこの用紙に記入して、生徒会に持って行って。そして私のとこまで回ってきたら、青春部再始動ってこと。ok?」
なんだろう。心臓が高鳴ります。ドキドキします。何かが始まる予感がします。何かが動き出した気がします。私、青春部を作りたい!みんなと青春したい!
「わかりました!書いてすぐ持っていきます!」
「ちょっと弥椰・・」
「いくよ!美咲!先生!失礼します!」
青春・・か。人生の中で最も多感で、感性が研ぎ澄まされて、それでいて不安定で。でも半端じゃ無い熱量を放てる時。羨ましいな。私ももう一度・・やり直せたらな。
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