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桜枯れた
はじまりは四月。雛鳥が生まれ、青虫や羽虫が卵から孵り、生命の気配が漂いはじめる春。丸山公園の桜の木々もその花を咲かせはじめていた。
「まだ五分咲きといったところかな」
「桜祭りがたのしみ」
等々と雑踏にも話し声が弾む。
異変に人々が気づくのに、時間はかからなかった。
この公園の桜の木で四八本あるうちの一本だけ花の蕾さえついていない。というかその蕾をつける枝が萎れてしまっている。木そのものが枯れかけてしまっているのだ。
「この木だけ元気ないね」
「せっかくの桜並木抜けがあってやだね」
口々に野次馬が騒ぎ立てる。
バサバサと音を立ててカラスが飛び立った。
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