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いつもより足取りが軽い。
いつもより心がウキウキしている。
幸せという単語や意味は前から知ってるけど、それを体感する時が来るとは思わなかった。
私、彼氏が出来ましたよ。
昨日玉砕する覚悟で告白したら、まさかの両思いでしたっていう少女マンガのような展開になりました。
久しぶりに顔が笑っている。
昨日の雨が嘘のように、なんのへんてつもない広がる青空が新鮮に見えた。
校舎に着いて、靴箱から上履きに履き替えようとしたら、あるはずの上履きがなかった。
ハッとした。
荒んだ現実は相変わらずそこにいた。
私は、イジメられているんだ。
理由も分からず。
ゴミ箱のほうに向かうと、上履きが昨日折られた傘と一緒にそこにあった。拾い上げて履く様を、遠くから楽しげに笑う声がみていた。
気が緩んでいたせいで、心に重くのしかかる痛みを感じた。
ひょっとして、両思いだと思っていた中村君は少女マンガのように
『おまえなんて好きになるわけだろ』
『おまえの絶望した顔がみたかったんだよ』
『全部嘘に決まってんだろ』
と悪意に満ちた言葉がどんどん頭の中で羅列されていく。
そうだ、きっとそうだ。
そもそも何故私のことが好きなのか疑問符が出てきた。
あぁ、儚い幸せだった。
彼の笑顔に嘘なんてないと思ってたのに。
涙腺がじわじわ刺激された。
「町田さん!」
彼の声が、唐突に後ろから私を抱き締めた。
異性と話すことすらままならないのに、好きな人に包まれた感触が直に伝わってきて負の感情が一瞬にして消滅した。
周囲のざわつく気配も伝わった。
「中村君……みんながみてるよ……」
「急にごめんね。でも、町田さんと付き合ってることが夢じゃないって分かったから嬉しいんだ」
ずーと遠くで見ていた彼の声が、私のすぐ耳元で私に話しかけてくれる。
裏切りや嘘が混じったものではなく、温かく優しい声色が、周りに見られているという羞恥心をかき消した。
「……私も夢じゃなくて良かったって思ってる」
途中まで刺激された涙腺は、悲しみより嬉しさが上回り、私の泣いた理由は書き換えられた。
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