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短距離走
あと少し、あと数秒、たったそれだけ。
ルールは簡単。誰よりも速く、100m先にあるゴールへ向かって走るだけ。大丈夫、落ち着け私。
高校最後の陸上人生をかけた戦いがはじまる。戦う相手は自分。自己ベストを更新すること、それが自分への挑戦だ。
スタブロをいつものように整え、スタートの練習をする。大丈夫だ。私はいつも通りだ。
さぁ、はじまる。
「オンユアマーク」
私は一礼し、スタートラインに沿って手をおく。
「セット」
全身の神経を研ぎ澄ます。
ピストルの音が鳴った瞬間、私は勢いよく駆け出した。周りの子も走り出す。スタートは前傾姿勢で走り、後半はリズムよく姿勢よく足を回転させる。たったの100m。スタートがかなり重要だ。なのに私はスタートが苦手だった。フライングすることが怖かったからだ。フライングをしてしまうと試合に出れなくなる。そう考えると怖くて足が動かなかった。
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