人外

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 人の体内に入って喰らい続けている化け物。僧の腹が一瞬爆発でもしたかのように膨れ上がると、首があり得ない方向に折れ曲がり白目を向いていた。  ぶら下がるような頭部、捻じれたような胴から零れ落ちるのは緑色の液体。自分の爪で体中を掻き毟りながら振り子の様に頭部は揺れる。  しかし、それも突然に終わりを告げる。ドンと言う叩きつける様な音と共に地面に倒れ込んだ、僧の体は全ての関節が逆に折れ曲がったまま体中を何かが這っている事が解る様に動き回っていた。  そしてゆっくりと僧は起き上がった。曲がった腕もいれた首もそのままに不気味に歩きはじめた。 「か、、、カワ。人ノカワ」  僧の身体を河童が動かしていた。おおよそ生きている様には見えない様な不格好な動きに加え、ぶら下がったままの頭部で喋る様はゾンビそのものであった。  歪な姿のまま貯水タンクに行くと中に飛び込み、河童の卵であろう物を割っては掬いながら血に浸かりながら飲み始めた。  暫くすると、腕も足も首でさえだんだんと治って行った。河童の妙薬と呼ばれるそれは確かに人間を治す力があったが、今の僧の体は外側の損傷を治すにしか至らなかった。  僧になりきった河童は廃ビルを後にすると、その後を幾重もの他の河童たちがぞろぞろとついて来る姿が有った。
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