喰らう

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 しかし、以前行った時とは全く景色が変わっていた。草木は伸び自然の景色と言うのは変貌を遂げる為、以前見ていた景色なのかそれとも自分が道に迷っているのか解らなくなり始めていた。 「も、戻ればいいか。迷うと流石にシャレにならない」  水本は独り言を呟く。踵を返し今来た道を戻ろうとしたが、三十分山を歩いて来ただけであったが振り替えた瞬間に”戻る”と言う選択肢さえないのだと理解した。 「、、、、、、、、今来た道何処だ」  伸びた草木の所為で、自分が何処を通って此処までやって来たのかの痕跡すら解らなくなっていた。  日は傾きはじめ、鳥の鳴く声が段々と不安をかき立てる。戻ると決めたので来た道であろう道を真っ直ぐに進んでいたが、本当に真っ直ぐに進めているのかすら自身も無くなっていた。  一度不安に駆られると、どんどん自分に自信が無くなって行った。写真を撮る事も忘れ、燃えるような夕日が黒く染まり始めた頃に等々、水本は座り込んでしまった。 「どうしよう、マズイ。帰れなかったら」  水本は助けを呼ぶにも携帯の電波の届かない場所に居た事と、彼自身が一人暮らしをしていた為、この山に来た事を知っているのは会社だけである事で、最低三日は助けは来ないと考えていた。 「会社に貰った休みは三日。実家への連絡は週一回で昨日した所だから絶対に気付かれない」
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