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「ガッアガガガガガガガキガガ」
喉を掻き毟りながら皮膚を傷つけ血が噴き出すほど掻き毟ったが、その手が止まる事は無い。息苦しさからか、喉の詰まった様なうねりを上げ続け断続的に口から腐った魚を吐き続けていた。
「何て事や!はよう逃げ、此処におったら皆死んでしまう」
そう和尚が言った瞬間、振動が突然嘘の様に止んだ。それは事の終わりにすぎなかった。建物内には甘く痺れる様な香りが漂い、まるで恐怖心までも麻痺させてしまいそうな香りがした。
「キッシュアァァァァァァァ!!」
まるで爬虫類の威嚇の様な鳴き声が突然鳴り響くと、救急隊員の一人の前に水本が立っていた。その姿を見た和尚はようやく気が付いた。
「もう、手遅れなんか」
水本の姿は人の形を留めてはいなかった。自分の裂けた口に手を入れると涎を多く掬い取る為に水かきの様な物が生え、頭の頭蓋骨である皿に塗りつける姿は河童そのものであった。
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