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救急車に二人を乗せると、和尚はそのまま山から降りる事となった。一人の救急隊員を置いたままであったがエンジンをかけた。
「、、、、、すまない」
俯きながら、目の前を覗きこむ様にフロントガラスの先の闇を覗く。木々はまるで自分達を拒むかのように、揺れながら逃げ出させまいと動いているように感じた。
必ずまた、迎えに戻ると心で何度も謝りながら山を降りた。すぐさま病院に向かい二人の様態を見て貰っている間に朝がやって来た。
日が明けると同時に何事かと警察がやって来た為、事情を話した和尚だったが、その胡散臭い話に警官たちは首を傾げる事は当たり前であった。
話を聞き終えた警官の一人は、だったら残った一人の救急隊員を迎えに行こうと言い、警官二人と和尚で山を再び登る事となった。
だが、寺に戻って見ればもぬけの殻であった。河童どころか救急隊員も居らず、護摩行後も自然と火が消えてしまっていた。ただ、昨日の魚の所為か腐敗臭は充満していたが、魚自体は何処にも残っていなかった。
唯一、この寺のおかしな点と言えば辺りが異様に滑り気のある粘液にまみれ、二つの大きな染みのような跡があっただけであり、何かが居た事は見て取れたが、それが何でどのような生き物だったかは、誰にも解らない様な状態であった。
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