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水本と、救急隊員が行方不明になって1か月ほど経った。オカルト界を震撼させた河童騒動も落ち着き、誰もが忘れかけた時期に再び河童の目撃情報が出始めた。
「人外の者を取り逃がしまして。大僧正様、どうかお力添えを」
すだれの向こう側の人物にそう語りかけた和尚は、こうべを垂れながら座敷の向こう側からの声の返答を待った。
秘匿を主とし、化け物や魑魅魍魎どもと唯一対峙できる日本のエクソシストとも呼ぶべき機関。名をつけず隠匿する事で機密を漏らさずかつ、少数精鋭を育成するための機関でも有った。
”部隊、青竜を派遣する。あれは病気のパンデミックの様に広がる恐れがある為、早急に対処せよ”
そう言うと、すだれの向こう側に居た筈の人物の影がまるで陽炎の如く揺らめいたかと思うと大気に溶け込む様に影は消えてしまった。
座敷の中には両脇に10人ずつの高僧が並び、その真ん中で頭を突っ伏したままの和尚はようやく頭を上げた。極秘裏に作られたこの場さえ、和尚は幾重の手続きを経て、ようやくこの場に来させて貰っているのである。
「青竜部隊の方々、お力添え。よろしくお願いします」
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