人外

8/31
前へ
/193ページ
次へ
 それは少しずつ確かに起こった変化である。行方不明者が出始め、やがてその数が増え始めると等々ニュースでも報道されるようになってしまっていた。 「そう言えばさぁ、向こうの山の神社に行ったカップルが居なくなったんだって」  帰宅途中の男子学生たちがそんな話をしていると、ふと甘い香りが漂った。それは一瞬の出来事であったが、全員呆けた表情のまま立ち尽くしていると、集まっていた男子学生の一人が何とか意識を取り戻し友人に声を掛けた。 「おい!お前ら大丈夫か?なんか変な気分になったな」  肩を叩くと、目が覚めた様に全員が何事かとざわつきつつ一人の男子学生が礼を言った。 「田中、ありがとう。でも前よく平気で入れたな。俺前に酒呑んだ事あるけど何かそんな感じだったな」  その男子学生は、自分がアルコールを飲んだ事が有る事の自慢と、その時の気分に確かに似ていたのだと感じたことを伝える為に田中に告げた。  その日、ただそれだけの出来事であったが、次の日にはその場にいた学生全員が行方不明になった集団失踪事件としてニュースを賑わせる事となった。  それと同時に不審な人影が多発し、失踪事件を追う複数人の何者かが現れたが、結局それらの人物もやがて居なくなる事となった。  気が付けばその場所は神隠しのような扱いになり、被害者がこれ以上出ぬよう事件現場をメディアが伏せる様になった。そして、そこに虚無僧の集団がやって来た。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加