人外

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 神隠しで閉鎖された住宅街は静まり返っている。建物の中にひと気はあったが、基本的には外出をしない様に言われている為、外の道には車すら走ってはいなかった。 「此処の学校かえ。確かに化け物の残り香は他より濃い気はするが」  学校の正門前。神隠しと騒がれた場所であり、何人もの目撃者がいるにも拘らず何故か、この学校から何処に行ったのか解らない神隠しの出発点の様な場所でもあった。 「残り香を辿れるかえ、しかし血の匂いに交じった残り香が何故か酔いそうな甘い香りが」  刺青の入った僧侶は、今までの臭い匂いとは反対に甘い香りが漂う一体からその匂いを辿り、住宅街を抜けた先の一棟の廃ビルの前に辿り着いた。  元より中に入れない様に立ち入り禁止のテープが張られていたが、それを気にした風もなく破り捨てると、エレベーター前で何階まであるのかを確認する。 「8階か、エレベーターは生きてはいないようだな。階段の場所は」  辺りを見回すと簡単に階段が見つかった。廃ビルは所々壁が剥がれヒビが入っている為、恐らくではあるが取り壊しの予定なのだろうと想像しつつあの甘い臭いを辿りながら上へ上へと昇り進めた。
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