人外

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 蓋を開くと甘い臭いと、濃い血の匂いが立ち上って来た。全身の痺れる様な感覚の中、最悪の情景を想像しながら貯水タンクの中を覗いた。 「、、、、、、、、何だこの気持ちの悪い物は」  先に目についたのはタンクの縁にびっしりと並んでくっ付いていた白いキノコの様な物。それから甘い臭いが出ている事はすぐに解った。  そしてタンクの下半分には、想像していた物が溜まっていた。赤ワインの貯蔵でもしているかのように下半分に溜まっていた液体は、間違いなく血液だった。 「早く、仲間に知らせなければ」  刺青の僧は、懐からスマホを取り出そうとしたが、それを取りだす前にタンク内の異変に気づいた。タンク内であるにも拘らず、溜まった血だまりに波紋が出来た。  それはゆっくりと此方を窺うように現れた。血の池から現れたのは頭に皿の様な物がある化け物。そして、刺青の僧はその化け物を見て悟った。 「聞いていた水本という男じゃない。女なのか」  女型の河童だった。そして、水本以外の河童が居ると言う事は既に河童はどれだけ増えているか解らなくなってしまった。そして女型の河童である事でこのキノコの様な物が何であるかの想像がついた。 「まさか、卵なのか」  そう思い立つと同時に、河童の首が伸びて刺青の僧の首に噛みつこうとしたが、寸での所で錫杖を盾にし難を逃れたが、タンクから離れた刺青の僧を追いかける様にして貯水タンクから河童が這い出してきた。
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