人外

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 河童は四足のまま這うようにしながら、蛇のような速さで刺青の僧に迫って来たが、先程の衝撃で折れ曲がったままの錫杖を前にし、念仏を唱え始める。 「化け物がぁぁぁあ!食われはせんよ」  錫杖の先が青白く光る。その光を河童位近づけると仰け反る様にして後ずさると、まるで火でも近づけられているかのように全身でその光を拒否していた。 「悪しき化け物!不浄なる者よ!その穢れは浄なる光によって滅せられよ」  河童に錫杖をつけると、目から血液のようなものを吹き出し、呼吸が出来ない様子で首を掻き毟りながら、もがき苦しんだ後にようやく動かなくなった。 「ひゅうはぁ、逝ったか。がっぎゅうああああああ」  河童の死骸らしきものに近づいた瞬間。刺青の僧の口のかなに突然何者かが腕を突っ込んできた。刺青の僧自身の意識はそこで途切れてしまっていたが、それは始まりに過ぎなかった。  背中から自らの腕を僧の口に突っ込んだもう一匹の河童は、ゆっくりと刺青の僧の口から軟体動物の様に少しずつ骨と肉を抉りながら、その体内に無理矢理に入って行った。
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