喰らう

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 もう次には呂律が回らなくなり呼吸も乱れきり意識も朦朧としていた。何が原因か解らなかったが段々と意識はそれに惹かれる様に持って行かれた。 「か、カワク、喉ガ。ヤケツクようニ」  歪んだ視界のまま、足元も解らぬ所為でふら付きながらゆっくりと水本は膝をついた。その目の前には頭頂部の割れた化け物が倒れ込んでいた。  近づいてそれがようやく”河童”と呼ばれる化け物ではないのかと気が付いた。しかし、そんな思考も一瞬で掻き消される程に酩酊状態にあった。 「、、、、、あう、べへぇ。あ、んぐぅ」  どうしてそんな事をしたのか、水本本人の意思なんてものは既に無く、人間としての思考や尊厳ですら、まるで取り払われたかのように河童の血らしき薄紫の液体を水本は啜りはじめた。  血を摂る為に割れた皿を舐める姿は既に人とは思えないような形相であった。月明かりの中、血を舐めつくした水本は喉の渇きが癒えないと更にその体に牙を当てた。  その時、水本は本当に人では無くなっていた。血を啜る為だけに自分の犬歯を伸ばし、それを突き刺しながら肉ごと血を啜る姿は最早化け物そのものである。 「うひぃ、ひぃひぃ!あひゃひゃひゃひゃ」  引き笑いが木霊した。夜の山の中での宴、まるで自分の好物でも見つけたかのように貪りながら河童を喰らう夜は続いた。
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