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一人では恐ろしい病室であっても、複数人いればどうという事は無い。そう考えていたが、看護師達の予想をはるかに超えた光景が病室に広がっていた。
「早く!水本さんを誰か押さえつけて下さい!!」
拘束されているにも拘らず、その頭頂部からは血が吹き出し病室が真っ赤に染まっていた。どうやら身動きが取れないと思っていたが、自分の頭をベッドの鉄パイプに何度も強打した事が見て取れた。
「止めて下さい!早くみんなも、水本さんもう止めて!!」
「フヒヒヒヒヒィィイ、アビャビャバビャバヤ!ササラサラサラ、ヒヒヒ」
笑いながら全身を揺すり自らの頭を何度も強打していた。頭頂部からは勿論であるがその衝撃で鼻からも出血し、顔中血まみれの水本の不気味な笑い声が病室内に鳴り響いていた。
その後、何とか水本を取り押さえ、口には猿ぐつわをして鎮静剤では無く睡眠薬を投与しようやく水本は意識を失う事となった。頭部の治療の為縫合を施したが、出血が止めるまでにかなりの時間を要した。
この日を境に、水本は一般病棟では無理であると判断し精神科の方に移される事になった。
しかし、窓に格子の有る精神科の病室でさえ、水本は拘束されながらも不可思議な事に、病室に得体のしれない何かを毎日の様に持ち帰って来ていた。
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