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俺には今、自宅の勉強机の引き出しに隠しているものがある。 ことの始まりは2日前。 「なあ宮下。これ松井に渡しておいてくんない?」 放課後の教室で、俺は友達の高橋(たかはし)行雄(ゆきお)に手紙を渡された。 「自分で渡せばいいんじゃね?」 高橋とは高校入ってからの付き合いだけど、絵にかいたような気持ちのいい奴だ。 入学して初めての社会科見学の日、バスで隣になった俺達は、野球の話で盛り上がってるうちに意気投合した。 昼休みもよく話す仲だからこそ、俺は気づいた。 高橋の視線が、隣のクラスの松井(まつい)沙知(さち)を追っていることに。 「ホラ、俺今日で学校来んの最後だからさ。隣に住んでるお前に頼もうと思って」 そう、高橋が登校するのは高校2年の終業式、すなわち今日で最後。 明後日、彼は親父さんの海外赴任地、ドイツ・フランクフルトに旅立つ予定だ。 「明後日、何時成田発の飛行機に乗るんだ?」 「10時」 「向こうでも元気でやれよ。・・・たまにはSkypeで話そうな」 「おう」 俺たちは少し早いサヨナラを済ませた。 そして、俺の手には高橋の手紙が残された。
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