受胎した女(ホラー詩集)より

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女は男に泣きながら叫んだ 出来ちゃったのよ! 男は顔を顰め立ち上がると 女の腹を蹴り始めた 俺がガキを死ぬほど嫌いなのを分かっているよな どこの野郎のガキだ? 女は体を屈曲させて「ゴメンなさい」と言った 「堕ろせ、今すぐ堕ろせ」 もう無理なのよ お前、俺を騙したな いいさここで堕させる 男はなおも蹴り続けた 女の股から赤黒い液体がズルッと流れ落ちた ヘッ、ガキなどドブに捨てろ 女の呻き声がアパート中に響き渡った 男はすぐに猿ぐつわをして黙らせた 女は血の海の中で動かなくなった 男は女を押し入れにぶち込んだ その夜からである 丑三つ時になると押し入れから ガサッゴソッと隙間ができた そこからこの世のものとは思えない化け物が 体をくねらせ男の元へズルッと這って来たのである それは重度の奇形の赤ん坊だった もうとっくに死んでいるのに「おとう、おとう」 と言いながら男の顔へズリ寄った 男は真剣を抜いて切り裂いた だがいくら切り裂いてもぐにゃっと合体して 「おとう、おとう」と這ってくる 男は遂に怒り狂い真剣を振り回した その先に刺さった化け物の頭部が 男の頭に噛み付いた 頭部は割れ、少しすると小さな化け物が 男の身体中から湧いて出たきた
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