落涙ド素人

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 もう30年ほど前のこと。  シンヤはダイスケとタツロウと3人で、雨降りでもないのにピロティの隅にいた。  「ガンバコ」という少しマイナーな遊びを改良して、新たなゲームを作る相談をしていたのだ。  それぞれが手頃なサイズの木の枝を持ち、ピロティの湿った地面に図形や線を描いては消し、描いては消し……。  コートの形を変えるとか、使うボールを2つにしてみるとか、さまざまな意見が飛び交う。  それでも、3人が文句なしに「コレ!」と思うアイデアが浮かばず、時間だけが過ぎていく。  20分休みは、もう5分も残っていなかった。 「シンヤくんたち、なにしてるのー?」  後ろから声がして振り返ると、3人と同じクラスのユミがいた。  両手を後ろ手に組んで体をユラユラさせながら、地面の図形をのぞきこんでいる。  シンヤたちは顔を見合わせた。
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