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翌朝出社すると、机に覆いかぶさって頬をくっつけている下田さんがいてわたしはギョっとした。
「お、おはようございます、下田さん。具合悪いなら帰ってくれていいですよ?」
恐る恐る声をかけると、下田さんが飛び起きた。
「あら、おはよう」
「三浦さん、疑ってごめんね。私、昨日ちょっと忘れ物を取りにこのフロアに戻ってきてね、ふたりの残業の様子チラっと見たんだけど、熱心にお仕事してるのね」
「そうですよう、だからそう言ったじゃないですか」
笑いながら答えたけど、心の中ではびっくりしていた。
下田さん、ほんとに隠れて見てたんだ!あれ冗談だったのに…コワっ!!
「北川くんったら、私のイスに座っていつもより砕けたかんじでスマホ見たり、ネクタイゆるめたり、頬杖ついたりしてたわね。うふふっ」
チラ見どころか、ガン見してんじゃん!
それでさっき、机にすりすりしてたの?キモ~っ!
「おはよう、俺がどうかした?」
北川さんがデータ入力用の書類を持ってやって来た。
わたしの机に置いたそれが、いつもの半分もない枚数で、あら今日は少ないのねと思いながら、下田さんが何て答えるだろうと興味津々でふたりを交互に見る。
「いや、あのね…北川くんが今日もかっこいいって話をしていたの」
下田さんが顔を赤らめながら、なかなか攻めたことを言った。
「あはは、ありがとう」
きっとそれぐらいのことは言われ慣れているのであろう北川さんは、照れることなく爽やかに笑った。
「今日、三浦さんの歓迎会兼忘年会だから、量減らしておいたから。ちゃんと定時までに終わるように下田さんも見張っててもらえる?俺、今日は午後からセミナーあって、そのまま直行するから、三浦さんの案内もお願いしていいかな」
「はい、了解」
下田さんは、はにかむように笑い、北川さんも、よろしくねと笑って自分の机に戻っていった。
わたしより5つ年上のふたりは、随分と大人に見えた。
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