魔女の本領発揮

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 バタバタとフロアを出る下田さんを見送って、再びPCの画面に向き直る。  あと少し…なんていうのは嘘で、それから1時間近く頑張って、ようやく終わったのが忘年会開始時刻の18時半だった。  机の上を片付けて見回すと、財務部のフロアにいるのは、わたしだけだった。  フロアの窓の鍵を確認し、コピー機やシュレッダーの電源を落として、空調と照明もオフにした。  出入口の近くの壁に引っ掛けている鍵を手に取って扉を閉め、鍵をかけた。  財務部に異動してきてから毎日北川さんと一緒にやっているから、自然と身についている。    財務部のフロアは、業務時間中はドアストッパーで開け放たれていて誰でも自由に出入りできるけれど、大事な書類が多いため、扉は鍵と数字の二重ロックになっていて、最後にこのフロアを出る人がしっかり戸締りする決まりになっている。  2か所のロックがどちらもきちんと閉まっているのを確認した。  鍵は1階通用口の守衛室に預ける決まりで、そこで記録簿に「財務部、三浦、18時45分」と記入して、鍵を預けてお店に向かった。  今日は12月23日。  街はイルミネーションやポインセチア、鈴のシャンシャンという音色やサンタさんの「ホッホー」という音声が溢れ、クリスマスムードに包まれている。  忘年会は本社ビルから歩いて10分ほどの中華料理店を借り切って行われていた。  19時前にようやくお店の前に到着して…あれ?  クリスマスリースが飾られたお店のドアが開き、中から出てくるふたつの影が見えて足を止めた。  下田さんと北川さんだった。  すぐ近くにいるわたしには気づかなかったらしい。  北川さんが下田さんを手を引いて、お店の脇の細い路地に入っていくのが見えた。  ええっと…やっと到着しましたー!って声をかけたほうがいい?  んなわけないよね、そんなことするのは野暮よね。  お店の入り口に到着したときに、北川さんの声が聞こえた。 「あの子に鍵とか貴重品とかを任せてはダメだって言ったはずですよね?」 「ごめんなさい。三浦さんが最後になるとは思ってなくて…」  おっと、ロマンスではなくて、わたしのこと!?
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