魔女の本領発揮

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 鍵や貴重品を扱わせてはダメだと厳しい口調で北川さんは言っていた。  わたしって、そんなに信用ないのかしら。  今日だってちゃんと、戸締りもしたし電気も消して、鍵もしっかり守衛さんに預けてきたっていうのに…。  何もわかっていなかった新人の時に、管理職しか開けてはいけない公印の入った棚を開けてしまった罪は、これから先もずっとこうしてつきまとうってこと?  マグカップの破片で切った右手が再びジンジンと痛みはじめた気がした。  遠くで聞こえるジングルベルの音楽が妙に腹立たしく耳障りなものに感じる。  わたしは踵を返し、下田さんに「急な体調不良で帰ります、ごめんなさい」とメールして、お店に入ることなくそのまま帰宅した。  帰宅したときに、オカンが「今日は忘年会じゃなかったのか」と驚くかと思っていたら「具合が悪いの?」と聞いてきた。  恭平くんから電話があったのよ、と。 「あー大丈夫、お店の場所を勘違いしてて、よくわからなくなったから帰ってきちゃっただけだから。てへっ」 「なんだ、そうだったの。ごはん用意したわよ、食べるでしょ。ところでなんで恭平くんは佳織に直接電話せずに、こっちにしてきたのかしら?」  首を傾げるオカンに言ってやった。 「それはね、わたしと北川さんは電話番号の交換なんてしてないからよっ。したくもないしねっ!」  突然不機嫌になったわたしを、ぽかーんと見つめるヨシエがいた。
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