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翌朝、おはようございますと言いながらフロアに入ったわたしに視線が集中するのがわかった。
ありゃ、昨日の歓迎会兼忘年会をサボったのがまずかったか?
そう思いながら机に歩いていく途中で、下田さんが駆け寄ってきた。
「おはようございます、昨日の忘年会はすみませんでした。もう体調は戻りましたので…」
わたしの言葉を最後まで聞かずに下田さんがかぶせてきた。
「昨日、このフロアを最後に出たの、三浦さんよね?」
何の話だろう?と思いながら頷いた。
「はい。鍵はちゃんと1階の守衛さんに預けましたよ?」
「そうじゃなくて!夜に守衛さんが各フロアを見回った時に、財務部の扉の鍵が開けっ放しで、電気もつけっぱなしだったって、厳重注意があったの。財務と経理関係の書類は部外秘なものも多いから、数字のほうのロックがかかっていたとしても、鍵開けっ放しはすごくまずいの。監督不行き届きで管理職の責任問題にもなるぐらいにね」
下田さんは眉間にしわを寄せ、深刻そうな声音で言った。
ん?ちょっと待って?
「鍵あけっぱって、それ誰がやったんです?」
わたしが首を傾げると、下田さんが鬼の形相になった。
「もちろんあなたでしょう、三浦さん!昨日の通用口の鍵の記録簿にも、あなたのサインがあったんだから!」
んーと……。
昨日の記憶を手繰り寄せてみた。
電気、消したよね?だって、真っ暗になったもん。
鍵かけたよね?だって、ちゃんとかかってるか再度確認したもん。
ほら、またこれだよ!
この不幸を呼び込む体質、どうにかならないの!?
下田さんが何やら言い続けていたけど、もうわたしの耳には届いていなかった。
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