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知りません、わたしじゃないです!と言ったところで、誰かが信用してくれそうな雰囲気ではなかった。
「あの子、販売部でもあれこれやらかして…」
「えー、そんなお荷物押し付けられたの?…」
そんな声まで聞こえてくる。
クスクス、ヒソヒソ…そして、蔑むような視線と、咎めるような視線……。
泣いちゃダメ。
泣いたらまた北川さんに怒られる。
あれ?そういえば北川さん、今日いないのかな?
そんなことを考えながらうつむいたわたしの視界の端に、音もなくスーッとフロアに入ってくる影が見えた。
北川さんが1枚の紙をヒラヒラさせて自席へ行き、その紙に何かメモしてフロアの奥の財務部長の机の上にそれを置くのを目で追った。
北川さんが持ってきた紙は、わたしの辞令だろうか。早いなオイ。
財務部に来て今日で9日目だっけ。
次はどの部署に異動だろ。
いよいよ倉庫かしら…。
しばらくして部長が出勤してきて、いつ呼ばれるだろうと思って待っていたら、名前を呼ばれたのはわたしではなく、経理課の山下課長だった。
山下課長は青い顔をしながら部長の元へ行き、紙を見せられて何かを言われ、深々と頭を下げている。
北川さんが笑いながらわたしに近づいてきた。
「おはよう、三浦さん。朝から災難だったね。さすがは魔女だな、次から次へと災難を呼び込むだなんて、俺がつきっきりになってないと今度は何をやらかすか…手ごわいな」
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