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「ねえ、佳織が給湯室で北さまを突き飛ばした上にマグカップ投げつけて大暴れしたっていう噂があるけど、ホントのとこどうなの?」
お昼にすみれちゃんが興味津々の顔で聞いてきた。
一体誰が見てて、なんでそんな歪曲したの!?
こっちは北川さんが掴みかかってきたせいで、お気に入りのマグカップを落とした挙句、破片で指切ったってのに!
「まあ、暴れたのは確かだよ、指切っちゃったしね」
絆創膏を巻いた右手をひらひらさせる。
「尻もちついてる北川さんは、なかなかレアだったかもねー」
あの時の北川さんの驚いた顔を思い出して、ふふふっと笑いがこぼれた。
「佳織、なんか怖い。大丈夫?」
「だいじょばないよっ!今日だってクリスマスイブだってのに、残業だよ!」
思わず社員食堂で大きな声を出して、慌てて口をつぐんだ。
最近はもうキャラ崩壊してる。
もっと可愛い子ぶっていたはずなのに。
すみれちゃんは、クスクス笑った。
「そんな大きな声出したら、北さまに聞こえちゃうかもよ?」
「それは大丈夫。今日、北川さん、お姉さまと外にランチしに行ったもん」
「へぇ~、ランチデートかぁ」
デートなのか、誰なのかは知らないけど、お昼休憩に入ったところでわざわざ財務部のフロアの入り口まで来たお姉さまが「北川くーん、お待たせー!」って甲高い声で北川さんを呼んだ。
フロア中の視線を集める中、北川さんはそれを気にする様子もなく、にこやかに笑って「何食べたい?」と仲良さそうに話しながら出て行ったのだった。
女たらしめ!ハゲろっ!
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