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短大を卒業して電子機器メーカーに入社したわたし、三浦佳織は、3年目の一般職としては珍しく、すでにこの財務部が3か所目の所属部署だった。
一般職は総合職とはちがって、本人の強い希望があったり、よほどのことがない限り異動しない。
新人で配属された営業事務部は、管理職しか扱ってはいけないきまりになっていた鍵を使った罪で、たったの2ヶ月で販売部に異動になり、さらに3年目の12月に財務部にやって来た。
財務部への異動を告げられた時、真っ先に浮かんだのは北川さんだった。
整った顔立ちで、いつもにこやかで余裕があって、背が高くて手足も長く、スーツをかっこよく着こなしていて、仕事もよくできるらしい。
一度、社内の男女3人ずつでイタリアンレストランで食事をしたことがあって、そのときの北川さんはとても親切に接してくれた。
そのイメージのまま財務部にやって来てみたら……。
最初の挨拶のときこそ「ようこそ財務部へ。よろしくね」と爽やかに笑って挨拶してくれたものの、それ以降、北川さんは、どういう訳かわたしのことを事あるごとに「魔女」と呼んで、厳しくあたるのだった。
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