魔女ですが、何か?

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「北さまにあれこれ構われてるんだってね?いいなあ」  北川さんはかっこいいから女子社員に人気があって、陰で「北さま」と呼ばれている。  遊び人で女たらしとしても知られていて、見かけるたびに違う女の人を連れているという噂もある。それでも、彼のかっこよさに惹かれて言い寄る女性は枚挙にいとまがないというモテ男だ。 「遊びでいいから一度抱かれてみたい」  そんな過激な言葉も一度や二度ではなく、この3年で何度も聞いた気がする。   「ちっともよくないよ。仕事になると、すごい厳しい人だった。もうヤダ」  お昼ご飯を食べながら口をとがらせて言うと、同期で販売部所属の堀越すみれが、それはそれでいいじゃん!と言って笑った。  だから、よくないんだよう。  もはやパワハラか?ってレベルなんだからさあ。  わたしが魔女なら、あの人は魔王だよ、ラスボスだよ!  「わたしどうして北川さんにあんなに恨まれてるんだろう?」  ため息交じりにつぶやくと、すみれちゃんは背中をポンポンと叩いてくれた。 「恨んでるんじゃなくて、期待してるんじゃないの?そんなに背中丸めてないで、いつもみたいに笑顔でシャキっとしなよ」  財務部に来て1週間で、すでにわたしは参っていた。  ありがとう、すみれちゃん…どうかあなたには、わたしの不幸が伝染しませんように!
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