魔女ですが、何か?

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 そして今日も、データ入力が終わらず当然のように残業。  下田さんは、これは教育の一環だからデータ入力を手伝わないようにと北川さんから言われているらしく、気にしつつも先に帰っていった。  人が少なくなった財務部のフロアで、北川さんは自分のノートPCを持ってわたしの隣、下田さんの机に座ってそれを広げると、わたしの未処理の書類を半分取って入力し始める。 「この仕事って、わたしが財務に来る前は誰が担当していたんですか?」 「俺」 「じゃあ、北川さんがおひとりでやったほうが早いと思うんですけど…」 「そうだろうね」  ……意味が分からん。効率重視なんじゃないの?  手を止めると怒られるから、止めずに頑張るのだけど、慣れないわたしは入力ミスしたり、途中でズレでよくわからなくなったり、あちこちミスがあるからチェックに時間がかかったりで散々だ。  北川さんはあっさり入力を終えると、それ以上は手伝ってくれる様子もなく、ノートPCを閉じて自分の机に置きに行き、また戻って来てスマホをいじったり頬杖をついて何か考え事をしながらわたしの作業が終わるのを待つのがいつものことだった。  先に帰ってくれてもいいんだけどな…。  居心地の悪さを感じながらもどうにか今日の分を入力し終えて、時計を見ると20時半。  少しずつ早く終わるようにはなってきている。  いつか、定時までのこの仕事を終えることができるようになったら、褒めてくれたりするんだろうか…。
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