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 哲明は座り込んだ姿のまま、川面を風に流される落ち葉の様にして教室から出て行った。何人もの生徒が哲明をすり抜けて行く。しかし、誰も気が付いていない。  ……オレは幽霊になったのか?   哲明が不安を覚えながら廊下をさ迷うように流れていると、剛と明が立ち話をしているところに出くわした。二人とも哲明の仲間だ。哲明はそこで止まった。傍に哲明がいる事には全く気が付いていない。そもそも、見えていないようだ。 「明よう、哲明とはそろそろ切れねぇか?」 「そうだなぁ。いつまでも馬鹿やってらんねぇよなぁ。あいつ、将来って考えてんのかね?」 「考えてねぇよ。ずっとこのまま不良一直線なんじゃねぇの?」 「付き合い切れねぇな」 「お前、卒業したら何すんだ?」 「オレは就職だ。叔父さんがやってる小さい工場だけどな。真面目にやれば、行く行くは社長だぜ。剛は?」 「オレは大学へ行くつもりだ」 「お前が?」 「地元の底辺大学なら何とかなるさ。卒業したら市役所にでも勤める。ここは地元優先で採用してくれるからな」 「そりゃいいや。……でも哲明はどうすんだろうな?」 「いつまでもガキじゃいらんねぇからなぁ」
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