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哲明はまた流された。壁へと進む。ぶつかると思い、思わず目を閉じた。しかし、何の衝撃も無かった。目を開けると職員室の中だった。哲明が大嫌いで仇のように思っている生活指導教諭の立花が、哲明のクラスの担任の櫛田と話をしていた。そこでまた止まった。
「立花先生のご意見は分かりますが、もう、あれは、長田哲明は手が付けられません」
「そうはおっしゃいますがね、櫛田先生、あれでなかなか良い奴ですよ。何とか良い道へ導いてやりたい」
「今日も久しぶりに学校に来ましたが、いきなり大声を出したりして、邪魔ばかりですよ……」
「でもね、学校に来るだけ、まだ良いじゃありませんか」
「邪魔しに来るなら、来ないでもらいたいですよ」
「わたしも哲明とは殴り合い一歩手前まで行く事はありましたよ。自分に注意を向けてほしいって、少し子供じみたところはありますが、根は素直な奴ですよ」
「ですがね、ご両親とお会いしたことがあるんですが、ほとほと疲れたとおっしゃっていましたよ。子供の頃は自分の事を『てっちゃんはねぇ』なんて言ってたのが嘘みたいだと泣いておられましたよ」
「親を泣かすとは、困ったものだ……」
「次、些細な問題でも起こすと、退学処分は免れませんなぁ。いくら立花先生が庇ったとしてもねぇ……」
「仕方ありませんなぁ、自分の力不足を痛感しますよ……」
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