君と一緒に(誠也視点)

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「お、先付が来たようだね」  数人の仲居が先付を持ってきたのを見て、祖父ちゃんは顔を綻ばせる。昔から、食べたり飲んだりが好きな人なのだ。祖母ちゃんの、次の次にくらいだけれど。 「先付?」 「お通しだと思えばいいよ、美咲ちゃん」 「本日の先付は北海道産の雲丹を使った雲丹豆腐でございます」 「お通しで、雲丹……」  上品な椀の中には、手作りの豆腐の上に雲丹がたっぷり乗ったものが入っていた。口に入れてみると山芋が入ってるのか、しっとりとした口当たりだ。豆腐自体にも雲丹が練り込んであり、深いこくのある一品である。  美咲ちゃんは緊張した様子を見せながらも祖父ちゃんに「いただきます」と言ってから椀に箸を付ける。そしてふるりと揺れる雲丹豆腐を口にすると、大きく目を瞠った。どうやら、お口に合ったみたいだ。 「誠也、美咲さん。酒は?」 「未成年だよ、僕たち。孫の年齢くらい覚えておいてよ」 「そうか、そうか」  祖父ちゃんは上機嫌で言うと熱燗をちびりと口にした。  料理が次々と運ばれ、それを口にするたびに美咲ちゃんの表情は柔らかいものになっていく。その様子を見て、僕は内心ほっとした。
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