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「美咲ちゃん、僕の海老天食べる?」
「え、いいの?」
「うん、食べて食べて。美味しい! って顔して食べる美咲ちゃんを見るのが、大好きだから」
「……ありがとう、誠ちゃん」
美咲ちゃんはへにゃりと笑うと、僕が口まで運んだ海老天を祖父ちゃんの方を気にしながら、恥ずかしそうに口にした。
「美味しい」
そして、嬉しそうに笑う。
うん、可愛いなぁ。僕はこの笑顔が曇ることは、なに一つする気がないんだ。
祖父ちゃんのことなんて関係ないふつうの会社に就職して、ふつうの生活をする。
美咲ちゃんはそっちの方が、嬉しいはずだ。
「美咲さんは、どう思う?」
「……私、ですか?」
祖父ちゃんに問われ、美咲ちゃんは困った顔になった。
せっかく気を逸したのに、祖父ちゃんめ。僕は恨めしい気持ちになる。
美咲ちゃんは大きな瞳を数度ぱちぱちとさせる。そして少しだけ沈黙した後に――
「誠ちゃんがやりたいなら、私はそれを支えたいです」
祖父ちゃんの方をまっすぐに向いて、きっぱりとそう言ったのだった。
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