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沈黙に気づいた美咲ちゃんは、優しく僕の頬を撫でる。
そして――
「ずっと一緒だよ、誠ちゃん」
僕の不安を蕩かす言葉を、優しい笑みを浮かべながら言ったのだった。
美咲ちゃんには、本当に敵わない。
僕の隣に立つ覚悟をしてくれた彼女のために……僕も頑張らないとな。
「……美咲ちゃん。頑張ることを許してくれる?」
「うん、一緒に頑張るね」
大きな瞳をまっすぐに見つめて訊ねると、美咲ちゃんははにかみながら頷いてくれる。
「苦労をかけたら、ごめんね」
たぶん、かける。
祖父ちゃんはスパルタだから、会社に入れば家に帰れないことも多いだろう。嫌だな、美咲ちゃんの顔を見れない日々が続いたら。
「大丈夫。たまに泣いちゃうかもしれないけど……その時は慰めて」
「それは、いつでも。僕もたまに不安になるだろうから、慰めて」
「うん、もちろん! いっぱい慰めるから、覚悟してて!」
僕たちは顔を見合わせ、笑い合って、そっと手を繋ぎあった。
手の中の柔らかな感触を感じながら、僕はこの子を幸せにしたいと……心から思った。
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