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美咲は誠也になにかがしたい
「……あ。もうすぐ誠ちゃんの誕生日だ」
カレンダーを見ていて、ふとそんなことに気づいた。
小学生のある時期まではお祝いをしていたけど、一方的に私が避けるようになってからからは誠也の誕生日を祝うことなんてなかった。
……家の前で悲しそうにうろうろしていることもあったな。
今考えると、少しだけ可哀想なことをしていたと思う。
いや、でもね。誠ちゃん、完全にストーカーだったしね。
いろいろな憎しみも募ってたから、お祝いできなくてもしかたないよね。
そんな言い訳をしつつ、『恋人』になってはじめての誕生日はなにを贈ろうかと考える。誠也はなにをあげても喜ぶんだろうけど……そうじゃなくて、ちゃんともっと喜ばせたいというか。
「……あの人に相談してみるか」
私と誠也の数少ない『共通の知人』の顔を思い浮かべて、私はうんうんと頷いた。
「え、なに? 俺に相談? 誠也と別れたいとかだったら、頑張って……いや、無理かも!」
大学で見かけた『彼』に話しかけると、いつもの明るい調子で返事が返ってきた。
「違うよ。誕生日プレゼント渡したいの。翼くんなら、誠ちゃんの好み知ってるかなーって」
彼は翼くん。誠也とは従兄弟同士で、幼い頃はちょこちょこと一緒に遊んだりしていた。私が中学で孤立していた時も気遣ってくれたり、いい人なんだけど……少しチャラい。
そして誠也と一緒で、眩しいくらいの美形である。
翼くんとしゃべっているこの間も、周囲の視線が痛い。
誠也の家は美形の血脈なのかな。ずるいな。
「いいな、美形の血脈」
「なーに言ってんの美咲さん」
翼くんはけらけらと笑ったあとに、「誕生日プレゼントねぇ」と腕組みをした。
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