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「美咲さん自身が、一番のプレゼントだと思うんだけどなぁ」
翼くんはそう言うと、小悪魔のような表情でくすくすと笑う。
「……たちの悪い冗談はいいから」
……翼くんに相談しても無駄だったかな。そんなことを思いつつ、私はこっそりとため息をつく。翼くんは『いい人』だけど、時々『いい加減な人』なのだ。
「あ、俺には期待してないって顔してる」
「はは、バレてる」
「ひでー」
他愛ない会話をしながら、二人で笑う。人付き合いが苦手な私相手でも、翼くんは懐に入るのが上手い。
「じゃあ、もうちょい真面目に考えますかね」
翼くんは真剣な表情になり、少しの間考えたあとに口を開いた。
「そうだなぁ。物だとあいつ、大抵は自分で買えるだろうし。思い出になることの方がいいかも?」
「思い出? 一緒に、旅行とか?」
「あは、それ喜びそう! 誠也、美咲さんと高校の修学旅行に行くのを楽しみにしてたのに、行けなかったって前に愚痴ってたしね」
……私が、女子高に行ったせいだね。誠也は、そんなことを楽しみにしてたのか。……修学旅行班が、一緒になるとは限らないのに。いや、班が一緒にならなくても別のクラスでも、誠也はついてきそうだな。
「ありがとう、旅行……誘ってみる」
私は翼くんにお礼を言うと、ぺこりと頭を下げた。
「ん、頑張ってね」
翼くんは無邪気に笑うと、よくできましたというように私の頭を優しく撫でた。
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