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「じゃ、ホテル代や移動費は美咲ちゃんに持ってもらって。現地で使う食事やお土産の代金は、僕に持たせてもらってもいい?」
「お祝いなのに、誠ちゃんに負担があるのっておかしくない?」
「全然おかしくない」
誠也はキリリと表情を引き締めて言ってから、真剣な表情で私を見つめる。
……これが誠也的には、最高に妥協した結果なんだろうな。
「……わかった。場所はどうしよう? 誠ちゃん、どこに行きたい?」
「美咲ちゃんとなら、どこでも」
「それじゃ話しが進まないでしょう!」
誠也は私が喜ぶところに行きたいのだろう。それはわかってる。だけど今回に関しては、『誠也』が喜ぶところじゃないと意味がないのに。
「……京都。美咲ちゃんと修学旅行、行けなかったから」
しばらく悩んだあとに、誠也はぽつりとつぶやいた。結局動機の真ん中は『私』だけれど、誠也の希望になった分だいぶいいな。
京都か。私の高校の修学旅行は長野だったので、実は行ったことがないんだよね。
「わかった、京都ね。京都に着いたら行きたい場所は?」
「美咲ちゃんが……」
「誠ちゃん!」
『私』という存在のことは、一度遠くに置いて欲しいんだけど。むしろ忘れて欲しいくらいだ。
「じゃあ、修学旅行みたいなコースがいいなぁ」
誠也はそう言ってほにゃりと笑う。私との修学旅行にどれだけ執着してたんだ、この男は。
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