美咲は誠也になにかがしたい

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 金閣寺、清水寺、伏見稲荷……有名な観光地ばかりの候補がスマホのメモに増えていく。その文字列を眺めていると、私の心も少しずつ浮き立っていった。なんだかんだで一度は行ってみたかったのだ。 「美咲ちゃんは、京都でどんなご飯が食べたい? なんでも奢るよ」 「おばんざいが食べてみたい! でも……高いのかな?」  京都と言えばやっぱりおばんざいというイメージだ。歴史ある家庭料理……というくらいの知識しか私にはないけれど、一度食べてみたいと思ってたんだよね。 「ピンきりかなぁ。夜だと五、六千円くらい? ランチなら二、三千円くらいであると思うよ」  誠也はそう言うとにこにこと楽しそうに笑う。二、三千円は平素のランチなら財布と難しい顔をして相談する値段だけれど、旅行のちょっとした贅沢の場合はちょうどいい値段に思える。  お金持ちの誠也には夜の値段でも、まったく苦にはならないのだろうけど……  夜のお値段は、奢ってもらうには私の気が引けるのだ。小市民だから、これは仕方ない。 「じゃあ、ランチでおばんざいを食べよう?」 「うんうん、良さげなお店を探しておくね。楽しみだね、美咲ちゃん」 「そうだね……楽しみ」  私が『楽しみ』と口にした瞬間、誠也はふにゃりと机に突っ伏した。 「誠ちゃん!? どうしたの?」 「……美咲ちゃんが僕との旅行を『楽しみ』って言ってくれるなんて。幸せすぎて……腰が抜けそう」  心底嬉しそうな口調でそんなことを言われて、呆れるやら少しくすぐったいやらで、私はなんとも言えない笑みを浮かべてしまった。
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