美咲は誠也になにかがしたい

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 そして京都旅行の当日。  駅のホームに着いた私は、どこかそわそわとした気持ちで新幹線を待っていた。誠也とはいつも一緒にいるのに……『旅行』という二文字が加わるととたんに落ち着かなくなるのはどうしてだろう。  隣の誠也は数日前からご機嫌で、目が合うたびに嬉しそうに微笑んできたり、ところ構わず抱きしめてきたりと、テンションがとても高い。  ……いつもの通りと言えばいつもの通りか。 「楽しみだね、美咲ちゃん!」  本日十数度目の『楽しみ』を口にしてから、誠也は太陽のような笑顔を浮かべた。その眩しい笑みを正面からまともに受けてしまい、なんだかくらくらと目眩がしてくる。美形の笑顔は非常に威力が高い。  ぎゅっと手を握られ、しっかりと指を絡められる。私も指を絡ませてから誠也を見ると、彼は顔を真っ赤にして口元を片手で覆っていた。 「……美咲ちゃんが、指を……」  ……誠也は自分からはいろいろしてくるくせに、私からなにかをされることには耐性がない。私がずっと冷たくしてきた弊害だとは思うけど。 「それくらいするよ。彼女、でしょ?」  言ってから恥ずかしい気持ちになって、誠也の方を見られなくなる。すると体にどんと大きなものがぶつかってくる気配がした。誠也が思い切り抱きついてきたのだ。 「美咲ちゃん!」 「だ、抱きつかないで! ここ、人が多いし!」  周囲の人々からの棘のある視線――主に女性たちからの怨嗟の視線だ――が突き刺さってとても痛い。 「だって美咲ちゃんが可愛いことを言うから。……本当に嬉しい」  強く抱きしめられ、幸せそうに言われると、抵抗する気は薄れてしまう。  ……私も、誠也に甘くなったなぁ。
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