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誠也の『甘え』に適度に付き合ったり、追加でカフェオレを飲んだりしているうちに、新幹線は京都駅へと着いた。結構、あっという間の時間だったな。
ホームに降りるとさすが連休中という人出で、人波に流されて迷子になったら大変だな……なんて考えていると。
「手、繋ごう?」
誠也が、大きな手をこちらに差し出してきた。
「……うん」
その手を握ると、ぎゅっと強い力で握り返される。『ちょっと痛いよ』って苦情を言いたくなったけれど、誠也があまりにも嬉しそうだから私はなにも言えなくなってしまった。
「へへ……幸せ」
へらりとだらしなく笑う誠也の周囲に、ピンクのお花がぶわっと散る幻が見えた気がした。……本当に上機嫌だなぁ。
「どうして、そんなに嬉しそうなのかなぁ」
「美咲ちゃんが、一緒にいてくれるから。それしかないでしょう?」
乙女みたいに頬を染めて、恥ずかしそうに誠也は言う。
誠也は本当に変わってる。毎日みたいに、心からそう思う。
「変なの」
「変じゃ……」
「でも誠ちゃんが変だから、こうして一緒にいられるんだね」
「美咲ちゃん……!」
誠也は顔を真っ赤にさせながら片手で頭を押さえて、ふにゃりとその場にしゃがみ込んだ。……通行の邪魔になっちゃうよ。
「誠ちゃん、立って。人の邪魔になるから」
「ごめん……幸せすぎて、腰が抜けた」
ふらふらしながら立ち上がってから、誠也はまた幸せそうに笑った。
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