美咲は誠也になにかがしたい

17/38
前へ
/81ページ
次へ
「じゃあ、ランチに行こうか」  誠也は気持ちを切り替えたらしく明るくそう言うと、小さなバッグに貴重品などを詰める。私も同じようにして、街歩きの準備を整えた。  ……生まれてはじめての京都、楽しみだなぁ。  それを思うと自然に頬が緩んでしまう。 「美咲ちゃん、にこにこしてる」 「だってはじめての京都だし、楽しみで」 「そっか。僕も美咲ちゃんとの京都、楽しみ」 「私も……だよ。はじめての京都だからってだけじゃなくて、誠ちゃんと一緒だから楽しみ」  誠也がいつも言葉を尽くしてくれるせいか、私も素直に言葉が出るようになった気がする。それはきっと、いいことなのだろう。 「……最近の美咲ちゃんは、本当に刺激が強い……」  両手で顔を押さえて誠也は呻くように言葉を漏らした。なにも刺激が強いことは言ってないと思うんだけど…… 「……意味がわからない」 「だって、今までの十年くらい塩対応だったのに! 今は浴びるみたいに美咲ちゃんが嬉しい言葉をくれるんだよ! 過剰摂取で、嬉しすぎて死んじゃいそう。本当に幸せすぎてつらい……」 「じゃあ、言うのをやめよっか」 「それはダメ!」 「冗談だよ。ちゃんとこれからも、いろいろなことを口にする」 「うん……嬉しい」  誠也はもう一度「嬉しい」とつぶやいてから、少し泣きそうな顔で笑う。そして私の手をぎゅっと握り、こちらを見つめた。 「美咲ちゃん。出かける前に……キスだけさせて」 「それくらいなら、いいけど」  了承をすると、綺麗な顔がすぐに近づいてくる。そして優しく唇を重ねられた。唇を舌で突かれたので口を開けると、誠也の舌がするりと口内に滑り込んできた。 「んっ……んんっ」  …………長い。キスがものすごく長い!  頭がふわふわとしてくるし、このままだと変な気分になってしまいそうだ。 「せ、せいちゃ……ダメ」 「美咲ちゃん、もう少し」 「も、もうダメ! と言うかなんで服に手を突っ込んでるの!?」  いつの間にか、カットソーを捲くり上げてブラ越しの胸に触れていた手をぺしぺしと叩く。すると誠也は不服そうに唇を尖らせた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

267人が本棚に入れています
本棚に追加