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「じゃあ、ランチに行こうか」
誠也は気持ちを切り替えたらしく明るくそう言うと、小さなバッグに貴重品などを詰める。私も同じようにして、街歩きの準備を整えた。
……生まれてはじめての京都、楽しみだなぁ。
それを思うと自然に頬が緩んでしまう。
「美咲ちゃん、にこにこしてる」
「だってはじめての京都だし、楽しみで」
「そっか。僕も美咲ちゃんとの京都、楽しみ」
「私も……だよ。はじめての京都だからってだけじゃなくて、誠ちゃんと一緒だから楽しみ」
誠也がいつも言葉を尽くしてくれるせいか、私も素直に言葉が出るようになった気がする。それはきっと、いいことなのだろう。
「……最近の美咲ちゃんは、本当に刺激が強い……」
両手で顔を押さえて誠也は呻くように言葉を漏らした。なにも刺激が強いことは言ってないと思うんだけど……
「……意味がわからない」
「だって、今までの十年くらい塩対応だったのに! 今は浴びるみたいに美咲ちゃんが嬉しい言葉をくれるんだよ! 過剰摂取で、嬉しすぎて死んじゃいそう。本当に幸せすぎてつらい……」
「じゃあ、言うのをやめよっか」
「それはダメ!」
「冗談だよ。ちゃんとこれからも、いろいろなことを口にする」
「うん……嬉しい」
誠也はもう一度「嬉しい」とつぶやいてから、少し泣きそうな顔で笑う。そして私の手をぎゅっと握り、こちらを見つめた。
「美咲ちゃん。出かける前に……キスだけさせて」
「それくらいなら、いいけど」
了承をすると、綺麗な顔がすぐに近づいてくる。そして優しく唇を重ねられた。唇を舌で突かれたので口を開けると、誠也の舌がするりと口内に滑り込んできた。
「んっ……んんっ」
…………長い。キスがものすごく長い!
頭がふわふわとしてくるし、このままだと変な気分になってしまいそうだ。
「せ、せいちゃ……ダメ」
「美咲ちゃん、もう少し」
「も、もうダメ! と言うかなんで服に手を突っ込んでるの!?」
いつの間にか、カットソーを捲くり上げてブラ越しの胸に触れていた手をぺしぺしと叩く。すると誠也は不服そうに唇を尖らせた。
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