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「……誠ちゃん、油断も隙もない! キスだけって言ったでしょ!?」
「だって、僕はいつでも美咲ちゃんに触れたいし。……ね? ちょっとだけ」
誠也は甘く囁きながら、無駄に大きな脂肪の塊を手のひら全体を使うようにして揉み込んだ。
「やっ」
ブラをたくし上げられ直接触れられて、体の力が抜けそうになる。けれど、私は必死に堪えて誠也を睨みつけた。
「誠ちゃん。続けるなら、しばらく触るのを禁止にするよ!」
「触るのって……キスもダメ? 手を繋いだりも?」
「うん、キスも。手を繋いだりも」
私の言葉を聞いた誠也は慌ててカットソーから手を引き抜き、私の服を整える。そしてごまかすようににっこりと笑った。
「じゃあランチに行こうか、美咲ちゃん!」
「……そうだね」
ジト目で睨むと、誠也の頬に冷や汗が伝う。視線を逸してため息をつきながらバッグを肩にかけていると、誠也の視線が痛いくらいに背中に刺さった。
「美咲ちゃん、その……」
「……なに?」
「もう、しません」
意気消沈した誠也が肩を落としながら謝罪をしてくる。そのあまりの落ち込みっぷりに、私は吹き出しそうになってしまった。
「誠ちゃん」
声をかけて手を伸ばす。頬を撫でるつもりだったのに、なぜか頭を下げられる。なのでそのまま、わしわしと撫でてあげた。
「怒ってないから、行こう?」
「うん。その……手、繋いでいい?」
おずおずと訊ねてくる誠也の手を、返事の代わりに繋いでみせる。すると彼は、安堵したように笑みを漏らした。
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