美咲は誠也になにかがしたい

20/38
前へ
/81ページ
次へ
「美咲ちゃんはどうして、僕の『可愛い』を信じてくれないのかなぁ」 「誠ちゃんが私を、その。か、可愛いと思ってくれてるのは、たくさん伝わってるよ。でも他の人から見たら……」  今だって不似合いな私たちは、ちらちらと他のお客に見られている。その面白がるような、そして敵意を含んだ視線を受けるたびに、私はいつでもどうしていいのかわからなくなるのだ。  誠也とずっと一緒にいるために……私は強くならないといけないのに。 「美咲ちゃんは、世界一可愛い」 「……ちゃんと、聞いてる?」  茶化された気がしてじろりと睨むと、誠也はなぜかだらしない笑みを浮かべる。どうしてデレッとなってるの。そんな要素が今の会話のどこにあったのだろう。 「美咲ちゃんは赤の他人と僕、どっちを信じる?」 「それは……誠ちゃんかな」 「うん。じゃあ見た目に関しても、それでいいんじゃないの? 僕を信じて? 美咲ちゃんは、世界で一番可愛い!」  ……そんなわけには、いかないでしょう。  誠也の価値観に寄り添ったら、ちょっと美的感覚がおかしいナルシストになってしまう。  そうは思うものの、そのあまりにバカらしい提案に私は吹き出してしまった。 「笑ってると、さらに可愛くなるよね」 「誠ちゃん、止めて。本気で恥ずかしいから」 「止めない」  そんなバカな会話をしていると、料理が席に運ばれてくる。  その運ばれてきた料理を見て、私は目を輝かせた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

267人が本棚に入れています
本棚に追加