美咲は誠也になにかがしたい

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「すごい、可愛い! 宝箱みたい……!」  いろいろな種類のお惣菜が乗った小鉢が、仕切りが付いた箱にぎっしりと詰められている。これがおばんざい料理…! 「誠ちゃん、美味しそうだね」 「そうだね、美咲ちゃん。じゃ、食べよう?」 「うん! いただきます!」  先ほどの落ち込みも食べ物を前にすると消し飛んでしまうのだから、我ながらどうかと思う。だけどそれくらいに、目の前の料理が素敵だったのだ。  まずは海老と筍の煮物に箸を付ける。口にするとみりんの効いた甘めの味付けが口中に広がり、海老の旨味がじんわりと染み出してくる。  この紅白なますも美味しいな。酸味と昆布の出汁が絶妙だ。上に少し乗っている細く切った柚子皮が、香りに爽やかなアクセントを加えている。  切り干し大根の煮物も、湯葉も美味しい。ああ、ご飯がすごく進む……! 「美味しい……」  しばらく無言で食べてから、私はほうっと息と言葉を吐いた。 「美咲ちゃん、はい」  声をかけられたのでそちらを見ると、真っ先に私が食べ終わってしまった海老を誠也がこちらに差し出している。 「誠ちゃん?」 「美味しそうに食べてたから、好きなんだろうなって。はい、あーん」 「はずかし……」 「僕の誕生祝いだよね」  ……そうでしたね。  観念した私はぱかりと口を開ける。すると海老がその中に入れられた。  うん。恥ずかしいけれど、美味しいものは美味しいのだ。    
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