美咲は誠也になにかがしたい

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「美味しかったぁ……」  美味しいご飯でお腹を満たして満足げにお腹を擦っていると、微笑ましげにこちらを見つめる誠也と目が合った。  心の底から嬉しそうで、慈愛に満ちたその表情は……子供を見守る母のものによく似ている。そんなふうに見られると、恥ずかしいんだけどな。 「美咲ちゃん。次はデザートを食べに行かない?」 『デザート』という響きに、胸がきゅんと締めつけられる。食べたばかりだというのに胃がデザートのスペースを確保しはじめて、別腹という言葉を心の底から痛感してしまった。  ……こんなだから、太るんだよなぁ。  そうは思うのに……心はデザートに傾ききっていて、『太るから止めとく』なんて殊勝な言葉が口から零れることはなかった。 「デザート、食べたい。お店は決まってるの?」 「濃厚抹茶の美味しそうなパフェのお店があってね。美咲ちゃんが好きそうだなーって」 「抹茶……大好き」 「ふふ、だよねぇ。ほら、見て見て」  誠也の差し出すスマホを見ると、美味しそうな抹茶パフェの写真が表示されていた。 「美味しそう! わらび餅が載ってるものもあるんだね。でも、わらび餅ってカロリーが高いんだっけ」 「旅行中くらい、カロリーなんて気にしちゃだめだよ」 「うう、だけどこれ以上丸くなるのはさすがに困る……」 「どれだけ丸くなっても美咲ちゃんは可愛いから、大丈夫」  花が咲くように笑いながら、いつものように恥ずかしいことを言う。  そんな誠也を見ていると……『ちゃんと彼を喜ばせたい』なんて。  そんな『彼女』らしい気持ちが、じわりと胸に湧いた。
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