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「誠ちゃん、嬉しそうだね」
「うん、嬉しい。美咲ちゃんからくっついてくれるなんて、すごく幸せ」
誠也があまりにも幸せそうに笑うから、鼻の奥がつんと痛くなる。『今までごめん』……そんな気持ちが胸に溢れて、それはそのまま愛おしさへと変わった。その『愛おしさ』を誠也みたいに素直に表現することは、まだできないけれど。少しずつでも、ちゃんと伝えよう。
「誠ちゃんが嬉しいと、私も嬉しい……気がするよ」
「気がする?」
「…………嬉しいよ」
「そっか」
恥ずかしくなって誠也の腕にぐりぐりと頭を押しつけると、優しい手つきで頭を撫でられる。
……手、気持ちいいな。
あんなに逃げたかった存在が、今ではこんなに私を安心させる存在になっているなんて不思議だ。
「誠ちゃんの手、好き」
「ほんと?」
「うん。撫でられるの、気持ちいい」
「じゃあ、いっぱい撫でる」
ぐりぐりと頭を撫でられつつ、デザートのお店へと向かう。歩きにくいことこの上ないし、周囲からは奇妙なものを見る目で見られてちょっと恥ずかしかったけれど……
「美咲ちゃん、可愛い。好き、大好き」
誠也が蕩けそうな顔をしているから、ちょっとの恥ずかしさくらい我慢しようと思った。
「美咲ちゃんが甘えてくれるなんて……ほんと、最高。誕生祝いという習慣に感謝だな。夢……じゃないよね?」
しばらくするとそんなことを言い出すから、ちょっと腕を抓ると誠也は「痛い……夢じゃない」と嬉しそうに言った。
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