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注文をしてしばらくしてから、店員さんが二つのパフェを運んでくる。
お盆の上に載ったパフェは、見るからにボリューム満点で美味しそう。それを目にした私の表情は、明るいものになっていたに違いない。
……だって誠也が、ものすごく嬉しそうな顔をしてるから。
「美咲ちゃん、美味しそうでよかったね」
誠也が、私の顔を見て幸せそうに笑う。
そんなに見られると……恥ずかしいんだけどなぁ。
「誠ちゃん、食べよ?」
「うん、そうしよう」
「じゃあ、いただきます」
持ち手が長いスプーンを手にして、まずはオプションでつけたわらび餅を掬う。それはぷるりと身を揺らしながら、スプーンの上に転がった。
抹茶が入っている濃い緑色をしたわらび餅は、きなこと黒蜜を纏った魅惑的な見目をしている。私はこくんと喉を鳴らしてから、わらび餅を口に入れた。
「んっ……」
きなこの香ばしさと、抹茶の濃厚な香り、黒蜜の力強い甘さが口中に広がる。噛み締めたわらび餅は強めの弾力を持っていて、抹茶のほろ苦さが味わいに深みを加えていた。
「はぁ、美味しい……」
わらび餅を飲み込んで、私はほうと息を吐く。
「美味しい? 美咲ちゃん」
「うん、すごく美味しい! まだメインの部分は、ぜんぜん食べてないけど」
「アイスが溶けてしまわないうちに、食べちゃおうね」
「うん、そうしよう!」
にこにこしながら、誠也と二人でパフェを頬張る。
上に載った苺と苺のアイスも、層の部分にたっぷりと入った抹茶アイスもとっても美味しい。
……幸せ、だな。
パフェを頬張る誠也をちらりと見ながら、そんなことを考える。
誠也が、逃げてばかりだった私のことを諦めなかったから……。私は今、こんなに幸せに過ごせているのだ。
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