267人が本棚に入れています
本棚に追加
おやつをぺろりと完食したあとは、バスに乗って清水寺へと移動した。
さすが連休の観光地だなぁと感心するくらいに門前には人が多くて、迷子になるのが心配だった私は誠也の手をぎゅっと握る。するとデレデレとしたお顔で、手を握り返された。
バスに乗っている間にスマホで公式サイトの案内図を確認したのだけれど、今目の前にある大きな朱塗りの門も含めて敷地内にたくさんの歴史的建築物があるみたい。見応えがありそうだと、ワクワクしてしまう。
「楽しみだね、美咲ちゃん。地主神社で恋占の石を試したり、縁結びのお守りを買ったりしないと……」
「それがね、誠ちゃん。地主神社は工事で閉門されてるみたいだよ」
「閉、門?」
「うん。お守りとかもしばらく売ってないんだって」
ついでにスマホで地主神社のことを調べたら、そう書いてあったのだ。
私の言葉を聞いた誠也の目が丸くなる。そして、がくりとその場に崩れ落ちた。そ、そんなに縁結びを楽しみにしてたの……!?
「美咲ちゃんとの縁結びが……」
いやいや、もう結ばれてるでしょう。そんなツッコミを入れながら、私は手元でスマホを操作する。そして、検索で出てきた画面を誠也の前に差し出した。
「ほら、誠ちゃん。赤坂氷川神社とか東京大神宮とか、東京にも縁結びに強い神社はあるみたいだから。帰ったら、一緒に行こ?」
スマホの画面と私の顔をしばらく見比べてから、誠也はぱっと表情を明るくした。
「そうだね、そうしよう! 東京にある縁結びに強い神社、ぜんぶに行こう! 東京近県を制覇するのもいいね!」
「いや、そこまでしなくても……」
本当にこの男は、何本の赤い糸を繋ぐつもりなんだ。そんなに何本も重ねたら、糸というよりしめ縄のようになるんじゃないだろうか。
ついつい呆れた顔をする私に、誠也は満面の笑みを向ける。そして立ち上がると、しっかりと手を繋ぎ直したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!