第1章

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 以前より、一部の若者の間では異性、同性を問わずにナチュラルボディでの性交渉を行わないという風潮があった。自由でいたい等、理由は様々であったがリビング・トランスプランテーション技術が確立された時代の中では特に問題となるような事柄ではなかった。ただ、それら行為を宗教に絡ませる団体も出始めており、様々な論調を生むことにもなっていた。 「ふぅーん……」 「だ、だから今はまだそういう気分じゃないのっ!」  マイカはジロジロと間近で眺めるミルアの頬を掌で押し退けながら言い放った。 「さみシングリュウーー」  頬を押さえつけられながらも無理に発する声がとても可愛らしい。 「いそがシングルよ……」  マイカは溜め息混じりに呟いた。 「ねえ、知ってたぁ? ファブリーって彼氏できたんだってぇ」 「そうなの!? そんな話聞いてないんだけど」  マイカはモニターに戻しかけた視線をミルアに向け直した。 「この前さぁ、アモーニスに寄ったときにねぇ、久し振りに会った幼なじみとぉ、付き合い始めたんだってぇ。いいよねぇ」  ミルアは幼き少女の如く可愛らしく微笑んだ。 「へぇ……」  マイカはキラリと光る綺麗な黒髪に付けた飾り気の無いカチューシャを弄りながら関心を示した。 「ねえねえ、もう少し可愛いのにしたらぁ。せっかくの髪がもったいないよぉ」 「ただのコミュニケーション・デバイスなんだからいいの」 「だからだよぉ。どうせ着けなきゃいけないんだからぁ、せめて可愛いのにしないとぉ」  ミルアは急に席を立ち、後頭部の大きなリボンを見せつける。サラサラとした長い金髪に真っ赤なリボンが映えている。幼い容姿に加えてヒラヒラとした可愛らしい服装も相まって、十八歳とは思えないほどの幼さを見せている。 「ねえ、仕事の時くらい小さいのに変えたら?」  呆れた表情でミルアを見つめる。 「ドレスゲームの時は変えてたよぉ」 「ああ、そうだったね……ねえ、もう乗らないの?」  ドレッサーズをしていた頃を懐かしむように思い出していた。 「うーん……ああ、そうだったぁ。でねぇ、その彼氏ってぇ、スッゴイお金持ちなんだってぇ。お友達でも紹介してくれないかなぁ」  ミルアは質問をスルーして話を元に戻していた。 「もー……あのさ、それってアモーニス人でしょ」 「偏見だよぉ。マイカだってぇ、外見より中身だって言ってたよぉ」
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