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ランディングキャリアーは惑星ヘイムダル8128dの殺風景な地表を音も立てずに滑っていく。ゴツゴツとした岩肌をものともしないグライディング走行はまるでラジコンで動く小さな玩具のようにも感じさせた。しかし、実際には直径五十メートルほどの円に近い形状で高さは三十メートル以上もある大型の乗り物だった。
ランディングキャリアーのオペレーション・ルームでは二人の少女が喋っている。一方は真面目な面持ちで作業をしながら一方的に話を聞かされている。もう一方はゆっくりとした口調でお構いなしに喋り続けている。
「マイカってさぁ……」
ミルアのフワフワとした可愛らしい声も、マイカにとっては既にネチネチとしたものに聞こえていた。
「何よ?」
マイカは外部の様子が流れるモニターに集中しながらも、うんざりとした口調で答えた。
「彼氏いるのぉ?」
ハイスクールで知り合ってから四年半、毎日のように顔を突き合わせている間柄とは思えない質問が放たれた。
「いないわよっ」
マイカはモニターから目を離してミルアを睨みつける。
「でもさぁ、ハイスクールじゃモテモテだったよねぇ。ねえねえ、どうしてみんな断ったのぉ? あっ、ベジタブ取ってぇ」
ミルアは気にせずに喋り続ける。
「その質問、全部返す」
マイカは目の前に置かれていたユニバーサル・インターフェース・モニターを手渡しながら呆れた顔で返答する。
「ええーっ……じゃあさぁ、メルはどうしてたんだろうねぇ」
「ああ、変わった男子に声かけられてたね」
マイカは矛先の変わった話にも記憶を辿りながら答えた。
「女子からもだよぉ」
「エッ!? そうなの?」
マイカは予想外の話に驚きの表情を見せる。
「下級生の女の子だよぉ」
「そうなんだ。でもさ、メルがそんなの憶えてるわけないよ」
「興味の無い事にはスルーだったねぇ……でさぁ、マイカはぁ、今はぁ、どうなのぉ?」
ミルアは更にねちっこく尋ねた。
「何がよ?」
マイカはうんざりとした表情を露わにしながら尋ね返した。
「だからぁ、男だよぉ。付き合いたいとか思わないのぉ?」
「まだセブンティーンなの。人生超長いんだから、まだまだ先の話よ」
マイカは食い気味に答えた。
「マイカってぇ、ナチュラルボディ純潔派?」
「べ、別にそう言うわけじゃ……」
マイカは思わぬ質問にたじろいだ。
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