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第1章
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現在の地球で脈々と紡がれている歴史を”第四の歴史”と呼称するようになって既に二百五十年以上が経過している。様々な諸説が唱えられてはいたが、最新の研究に於いても四番目という数字は未だ覆ってはいない。
しかし、四番目であろうが五番目であろうが、今を生きる人々にとっては何の意味も無い数字であることは確かだった。地球やそれに付随する生物の過去の生い立ちなど、一般市民にとっては無意味でしかないのだ。
地球が、異星人たちによって作られた惑星国家同盟”プラネタリー・ユニオン”に正式加盟したのが六十五年前、UE二一三〇年の出来事である。
様々な条件を満たしていると判断された地球はプラネタリー・ユニオンからのオファーを受けて、僅か二年にも満たない期間で加盟へと至ったのである。それは、『早すぎるのではないか』、『簡単に決めて良いのか』、『悪い条件を呑まされていないか』、『裏取引でもあったのではないか』等々、様々な意見や憶測を呼ぶことになっていた。
プラネタリー・ユニオンが地球に持ち込んだ技術は非常に有益なものであった。古い技術は刷新され、瞬く間に先進惑星国家への仲間入りを果たしていた。
ただ不思議なことに、隕石落下事故以降に見出された技術の一部がプラネタリー・ユニオンの技術に似通っていたのである。これが何を意味するのかは興味深い事柄であったが、そこに壮大な陰謀が隠されているなどという想像は誰にもできなかった。それはプラネタリー・ユニオンで勝ち得た地位と信用が驕り高ぶる心を生んでいたからであった。地球人の優秀さ故の結果なのだと……。
プラネタリー・ユニオンに加盟して一番の変化は宇宙にあった。
特に宇宙に於ける技術革新は人々を宇宙へと誘っていった。中でもワープ航法に代わるトランスファー・リングは無限ともいえる距離をほぼゼロにまで縮め、宇宙での生活圏を広げると共に異星人との交流を密にしていった。
プラネタリー・ユニオンへの加盟、それは”第四の歴史”が未来永劫続くと認定された証。現在の地球人類が未来永劫繁栄し続ける証。地球人類が完全に成熟した種となった証……。しかし、それらはプラネタリー・ユニオンが定義した加盟条件の中での証。
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